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地価下落 家賃下がらぬ その理由 [不動産]

 最近、あちらこちらで「バブル期より地価が40パーセント以上も下落しているが、家賃は高止まりしたまま」といった論調のブログや論説、コラムが散見される。なかには『脱法シェアハウス』や『違法シェアハウス』などの問題と絡めたり、『ネットカフェ難民』や『ホームレス』などの問題と絡めて論じるケースもある。


 しかし、不動産法(民法・借地法・借家法・借地借家法・区分所有法)などの法律を学び、不動産業界で生きてきた人間として少し述べたい。


 この手のコラムで気になった直近のものに、livedoorのBLOGOSというコラムにHayato Ikedaという名前で
執筆しているブロガーのコラムがあった。


 タイトルは『2013年参院選!各政党のマニフェストを比較してみる(住まいの貧困、住宅政策関連) 』というもので、「ぼくが特に関心を持っている住宅政策に関して」と述べられているところを見ると、住宅問題、不動産問題に何らかのかかわりを持ち続けている人物のようです。


 そして、冒頭から「端的にいえば、家賃が高すぎなのです。賃貸物件の価格は高止まりしていますし、公的な施策が必要だと考えます。」と結論を述べられていて、ここでは各党のマニフェストや公約などをコピペして記事に仕立てています。これだけだと誰でもできるコラムで、はっきり言って中高生でも作成できるコラムで、大学生のレポートとして提出すれば、「F判定(やり直し)」確定の駄文で、取り上げる必要もないのですが、そこに関連記事として、Hayato IkedaのIHayato書店というコラム記事にリンクが張られていたので、閲覧すると、住宅・不動産問題に関して述べられていたので、読んでみました。

 タイトルは『デフレ、人口減、空き家率上昇中!なのにバブル期から「家賃」がまったく下がらない理由』。


 その最初に「あまり知られていないことですが、日本の家賃はバブル期から変わっていません。」と記載されているのですが、実際は一般的な賃貸物件の家賃は下落の一途をたどっています。


 そして、尤もらしいグラフを表示しています。それが下記のグラフです。  

untitled.jpg

 出典も尤もらしいところなのですが、ここで問題があります。1986年を100とした指数でグラフを作成しているのですが、住宅問題や不動産問題、特に『賃貸』に関心のある人であれば、1986年は特別な年なので、この年を100として指数を求めることはしないはずなのです。


 1986年にいったい何があったのか。それは昭和14年10月18日勅令第704号(地代家賃統制令)が1986年12月31日失効し、効力を失った年なのです。


 地代家賃統制令は日中戦争を戦っていた日本にとって、兵士たちの後顧の憂いを無くすために出された法令です。当時のインフレ状態の日本国内で兵士の家族が地代や家賃の値上げで住居を失うようなことがあっては兵士たちが安心して戦えない。いや安心して死ねないので、このような法令が出されたのです。


 戦後も引揚や復員などで人口が急増し、空襲などで多くの住宅が失われている状況。要するに住宅難の情勢下、この法令は継続された。その法律が失効したのが1986年の年末だったのです。


 地代家賃統制令では、失効直前の1986年時点で、大阪市、東大阪市、堺市などの住宅地で地代の一坪あたりの地代は100円から130円くらいでした。そのため、100坪(約330㎡)の家でも地代は1万円から1万3000円程度で、40坪の土地に庭付き平屋の家屋5K程度の間取りで1万円程度だったのです。家賃地代統制令は古くからの借地人、借家人は保護しましたが、新しい借地人や借家人は保護の対象にしていなかったため、1986年当時、古くからの借地100坪が1万円で、40坪の土地に庭付き平屋の家屋5K程度の間取りで1万円なのに、新規の15㎡くらいのワンルームマンションが3万5千円ほどというような価格差が発生していました。


 バブル期、15㎡くらいのワンルームマンションの家賃は東大阪市(近畿大学付近)で5万円程度でした。現在は2万円程度で募集しても空室だらけで契約が成立しない状況です。20㎡くらいのワンルームでやっと2万円から2万5000円程度で契約が成立しています。1986年からバブル期までに40パーセント程度上昇し、バブル期から現在までに15㎡くらいのワンルームは60パーセント以上下落しているのです。そして、それでも空室が発生している状況です。下落していないのでしょうか。


 反対に、1986年当時、借地100坪が1万円程度だった東大阪市(近畿大学付近)では、バブル期に4万円程度まで値上りました。現在は5万円程度で推移しています。値上り続けているのですが、もともとが統制令の影響で安価に過ぎたのです。家賃も同じです。40坪程度の土地に庭付き平屋5K程度の間取りに場合、現在は4万円から5万円程度です。どちらも500パーセントの値上りといえばそうですが、バブル期以降横ばい程度で推移しています。


 ちなみに売買価格は、東大阪市(近畿大学付近)で1986年頃、坪50万円程度でした。バブル期に坪100万円から150万円程度まで跳ね上がり、現在は60万円程度です。


 土地の売買価格は急激な変動があるのに、地代、家賃は急激な変化がないのはなぜかわかるでしょうか。


 売買価格は売主と買主の合意で成立します。景気がいい時期であれば高値で成立します。しかも、その支払いは一度きりなので、手持ちの資金があれば高値でも成立するのです。しかし、地代や家賃は毎月発生する支払なのです。しかも、貸主と借主は賃貸期間の間、継続的に関係を維持し、値上げも値下げも更新のたびに話し合わなくてはならないのです。当然、急激な値上げは難しくなります。


 さらに、借地にも借家にも借地法や借家法、借地借家法などの法律があり、それを基にした判例が積み上げられており、急激な値上げはできないように運用されているため、地代、家賃の変動は大きくはならないのです。


 そのため、地代家賃統制令が失効してもなだらかに値上がりを続け、バブル崩壊後も値上り続いているところもあるのです。実際、地代家賃統制令の対象だった地域では周囲の家賃の半値以下のところが多く、しかも、老朽化しており、借地法、借家法の適用があるため、老朽化した家屋の建て替えが進まず、土地の有効利用が制限され、駅前の一等地に平屋の老朽木造家屋が並び、庭に建て増した違法建築があり、前面道路幅はモータリゼーション以前の幅員しかなく、大規模災害の場合には延焼して大火になると指摘されている地域が多いのです。


 「地価が下落しているのに、家賃が下がらない」と主張する人たちの多くが、この問題に触れず、安価な住居が減少している点と、家賃が下がらないという点だけに注目しているのですが、統制令の対象と、一般的な賃貸を平均すれば、それほど下がっていないとなるのかもしれませんが、賃貸価格は東京の都心部の一部を除けば完全に下落一途です。


 たとえば、単身者向け賃貸物件でも、

 1980年代はバストイレ、キッチン共同が一般的でした。

 1990年代頃から共同がなくなり、各部屋にバス、トイレ、キッチンが配置されるようになり、いわゆるワンルームマンションというものが増加。

 1995年頃にはスタンダードになりました。

 2000年くらいからバスとトイレが一体型だった欧米型の所謂「ユニット」からバストイレが別に分かれた日本独自の「セパレート」と呼ばれるタイプが主流になりました。

 2005年くらいからワンルームではなく、1Kタイプが増え、

 2010年くらいから1DKが増えてきています。


 専用面積の㎡数で比べると、

1980年---10㎡---2万5000円
1990年---20㎡---3万5000円
2000年---25㎡---5万円
2005年---30㎡---5万円
2010年---35㎡---5万円
(東大阪市近畿大学付近の場合)

と、かなり広くなっています。家賃はそれほど上がっていないのですから、実質値下げといっていいと思います。また、設備も、オートロック、テレビドアホン、インターネット設備(無料利用)、衛星放送、デザイナーズ、追い炊き、シャワートイレなどいろいろな設備が付加されていることも考えれば、さらに値下げといってもいいと思います。

ちなみに、2000年に完成したマンションで25㎡のワンルームの家賃は現在では3万円程度です。


家賃は本当に高止まりしているのだろうか。


また、Hayato Ikedaが主張するように公営住宅の需要は増えているのだろうか。公営住宅に応募が殺到しているのはわかる。民間より安価だからだ。しかも、住環境は優れて良い。民間は個人の懐と勘定でするため経営感覚が必要だが、公営住宅は税金でするだけに経営感覚はゼロでOKだ。


実際、公営住宅が民業を圧迫している現状がある。公営住宅の建築費をペイするのにどれくらいの期間が必要か。200年程度かかるという試算がある。建物の耐久年数は60年がいいところだ。しかも、定期改修の必要もある。税金を無駄遣いしている公営住宅をさらに増やせとは狂気の沙汰だが、こういうことを主張するコラムニスト、ブロガーは多い。経営感覚がないからだろう。住環境を改善するには老朽化した家屋を取り壊し、災害対策をしつつ、新規の賃貸物件が増える環境をそろえることが必要だ。そうすれば、競争の原理が働いて、今以上に良質で安価な物件が増えるだろう。


今でさえ、設備付加競争で疲弊しているランドオーナーにさらなる追い打ちとなるかもしれないが、それが不動産賃貸業の厳しさだ。


家賃は上がらない、いや、下がる。そのうえ投資は増える。それでも続けるかどうか。不動産賃貸業を生業としている人はこれから選択の時代になるかもしれない。
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コメント 3

やおかずみ

確かに家賃は、バブルの崩壊などがあっても、あまり変動
しないなという実感です。
by やおかずみ (2013-07-09 08:57) 

yukikaze

皆様、nice!ありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

by yukikaze (2013-07-11 09:57) 

yukikaze

やおかずみ様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申しあげます。

地域差もあるのかもしれませんね。大阪では値崩れは大きいように思います。私の住む地域ではバブル期の半値前後が普通です。家賃の下げ幅を減少させるためにはリノベーションして、間取りを変えて、設備を付加してという状態になっています。ま、税務署が一番困っているようです。市役所は固定資産税がメインなので家賃が下がっても影響はないのですが、家賃が下がると不動産賃貸業という一番、取り易い徴税先の収入が減りますから。まして、設備投資やリノベーションをされると、経費やら何やらで課税対象が減りますからね。。。バブル期にあまり家賃が上がらなかった奈良県や兵庫県の北部、西部はあまり変動がないとも聞きますので、地域差が大きいのかもしれません。
by yukikaze (2013-07-11 10:07) 

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